March 2, Wednesday, 2016
<念願のマイホーム>
 和奈が幼稚園に通い始めてみて、私たち夫婦は今の幼稚園とその学区の人と環境がとても気に入り、なんとか小学校に上がる前に、こちらの学区に引っ越せたらいいねと話してきた。常々話してはいたものの、漠然としたもので、まぁこの3年でアンテナを張ってて何かが引っかかれば。程度のものだったのだけれど。
 年末、一番仲の良いみよちゃんのおうちの近くで、建売土地込みで新築の物件が2,080万で出ている!破格値!というのを耳にしたので、年末からまたちょっと物件に興味が湧いて、二人でスマホで彦根市内の物件を検索するようになった。その流れで、築35年の中古物件が安くで、しかも小学校のすぐ近くで出ていることを知り、ためしに覗いてみようということで、1月のある日、私と和奈で不動産屋さんに連絡して中を見せてもらうことになった。
 web上の小さな画像では分からなかったのだけれど、行ってみたら、どうやってこれが築35年ということになったのか?と言いたくなるような古民家だった。不動産屋さんも、申し訳なさそうに、
「なんでか登記簿上築35年にはなってますが、僕が色々見る限り、・・・うぅ〜ん・・・言いにくいんですが、築・・・最低60〜70年は経ってると思います。」
と言っていた。営業マンは、到底興味を持ってもらえないだろうと思ったのか、ざーっと中を案内すると、まぁ興味が湧いたらまたご主人と見に来てください。と言って、どうですか?のお伺いもなく帰っていった。

 ところが私のほうは、実はそこそこ興味が湧いていた。大きくて立派な梁、燻し色した鴨居、土壁、たたきの土間!いいやん!築60〜70年にしてはずいぶんとこぎれいに使っている。ただ、床は畳か底板かは分からないけれど、ずいぶんとふかふかしているから、買うことになったら全部張り替えないとダメだろうけれど、何と言っても見るからに瓦がきれい。ごく浅い過去に葺き替えたのが分かる。これなら最低限のリフォームで、私たちの残りの人生を暮らすには十分な物件に値するのではないか。そう思ったので、仕事から帰ってきたアツロウに物件の報告をした。そして、
「ただ、その物件の前がね。ガバっと空いてるのよ。だから今は開放感あってめちゃ日当たりもいいけどさ。あそこに将来的に誰かが何か建てると、ぜーんぶその影になるよね。それがちょっとなぁ・・・。あの前って、宅地なんかなぁ・・・。」
と付け加えた。 すると、
「それにしても建て地45坪で築70年ほどの物件にしては、この価格、高すぎへん?35年やったら分かるけど。」
と言う。うん。それもそうだ。そもそも敷地って、どんだけよ?ということで、元見たwebの広告ページを開けてビックリ。今まで気付かなかった私たちも私たちだったが、敷地が200坪弱になっていた。
「これって・・・あの家の前のでっかい空き地、全部込みってこと?」
思わず顔を見合わせて、金額を坪数で割ってみたら、彦根市の城下町内ではありえないほどの超破格値になった。城下町で200坪の土地が買える。アツロウは鼻息荒くグーグルマップを広げて土地の大きさを確認し、すぐに翌日物件を見せてもらう予約を入れた。

 翌日物件を訪れると、なんと家主さんに出くわした。亡き父親の命日ということで、家の周りから中まで掃除に来られていたのだった。不動産屋さんも知らなかったらしく、えらく恐縮していた。アツロウは縁の下も潜って、湿気やシロアリの状態まで見るつもりで、汚い格好をしてきたのだけれど、さすがにそれもやりにくくなった。そこで、一巡して普通の見学となったが、その間私と和奈は家主さんにお茶を出してもらって、こたつに入って話し込むことになった。そのおかげで、どんな人がどんなふうに住んでいて、何故売りに出すことになったかという経緯も詳しく知ることが出来た。これだけの敷地を破格値で売り出したのは、両親と住んだ思い入れのある懐かしい我が家を、出来れば今後も壊さず大切に使って欲しいという願いが込められての価格だったのだ。ちなみにこの物件は、家主さんが言うには、はっきりしないけれど、私のお爺さんの代に建てたはずだから、100年は経っているはず。ということだった。
 見学したアツロウも、話を聞いた私も、この物件がますます気に入った。最後まで住んでいた方の命日に見学に来たのも何かの縁があるように感じられた。こうして、この物件は、徐々に私たちが求める終の棲家へと近づいていった。

 2月に入って、将来的に同居する義母に見に来てもらってOKが出、古民家に住んでこそ良し悪しの分かる実家の両親に来てもらって、最低あと40年くらいは住める代物かどうかを見てもらってOKが出た。アツロウはもちろん、みんな物件自体よりも、それだけの土地を買うということに賛成だった。人生における大きな物事が決まるときというのは、いつもこんなふうに、何故かとんとん拍子にことが進んでいく。こうして、私の大好きな祖母の誕生日である先月26日に、晴れてその物件を譲り受ける契約となった。

 これからローン組みなどが始まって、リフォームの工事が入り、私たちがそこに引っ越すことになるのは、多分5月に入ってから。小学校まで歩いて8分。幼稚園へは自転車で、ものの5分。大学へも歩いて10分ほどだ。むかーしから夢見ていた、“縁側のある家”が、本当に自分たちの手に入ることになった。広々とした庭と一緒に。ようやく4階分の階段ともおさらばだ。
 引っ越したら犬、飼おうね!わたし、トマトと芽キャベツを植えて、自分で作ってみたい!と、楽しみにしている和奈。クラスメイトのおうちも一番近いところだと歩いて100mほどになった。これからのびのびと、大声出しても暴れても怒られない生活へと開放してやれるのが楽しみでならない。
 私たち家族の彦根での生活が、ようやく腰を落ち着けて始まるような気分だ。